
久しぶりに読み返したら、4か所が嘘になっていました
僕は自分の事務作業をAIに任せています。そのAIには、毎回かならず読ませているファイルがあります。「これは守ること」「これはやってはいけない」を書いたファイルです。会社でいう業務マニュアルにあたります。
先日、そこに書いてある決めごとを、実物と1つずつ突き合わせてみました。4か所が、実体とずれていました。
いちばんひどかったのは、決まった時刻に処理を動かす仕組みの話です。うちのサーバーは、前の機械から新しい機械へ引っ越しています。ところがマニュアルのほうは、引っ越し前のやり方のままでした。名前まで書いてある3つの仕組みは、いまの機械には1つも存在しません。
ほかにもありました。すでに消したファイルを、そのまま指していました。いちばん上に書いてある参照先は、前の機械のフォルダのままでした。
地味ですが、いちばん怖かったのはこれです。「見に行くカレンダーは3本」と書いてありました。実際は4本でした。1本増えていて、増えた日から実際に予定が書き込まれています。マニュアルのほうは、その1本を知りません。
覆したはずの決定が、3つのファイルに残っていました
同じ日に、もう1つ見つかりました。
ある方針を、8月24日に「こうする」と決めていました。それを8月31日に、僕が逆へ変えました。ところが古いほうの記述が、3つのファイルにそのまま残っていました。
怖いのはここです。AIは次に動くとき、残っているほうを読みます。「先週こう言いましたよね」は通じません。書いてあるものが、そのまま正しいものとして扱われます。
このとき、同じ古い記述がもう1か所にも残っていました。ただしそこは、別の担当が書き込む決まりになっている場所です。勝手に直さず、そのまま報告に回しました。直してよい場所と、持ち主に返す場所は分けています。
AIは、古いほうを疑いません
人が相手なら、こうはなりません。入ったばかりの担当者でも、しばらくすれば「これ、もう無いですよね」と言ってくれます。目の前の現場と、手元の紙が食い違うからです。
AIは、そこが違います。渡されたものを、そのとおり正しいと思って動きます。しかも、書いてあるとおりには動くので、その場では何も起こりません。おかしいと気づくのは、だいぶあとです。
もう1つあります。AIは前回の会話を覚えていません。毎回、書いてあるものだけを読んで動き出します。ですから「あのとき口で伝えたこと」は、書き足していないかぎり、次の日には消えています。
指示書を古びさせないための決めごと
- 決めごとを変えたら、同じことが書いてある場所を全部探す。1か所だけ直して終わりにすると、古いほうが必ず生き残ります
- 実物と突き合わせる日を決める。読み返すだけでは気づけません。書いてある名前が本当に存在するかを、その場で確かめます
- 直してよい場所と、持ち主へ返す場所を分ける。ほかの担当が書く場所は、勝手に直さずに報告する
- 口で伝えたことは、その場で書き足す。書かなかったぶんは、次の日には無かったことになります
だから、足す前に減らしています
もう1つ、地味に効いていることがあります。マニュアルは、膨らむほど古びます。
うちのファイルは、気づけば105.2KBまで育っていました。失敗するたびに、その顛末を書き足していたからです。読み物としては役に立つのですが、量が増えるほど、実物と合っているか確かめる場所も増えます。
そこで、出来事の顛末は、それぞれの手順書のほうへ移しました。マニュアルに残したのは、教訓の1行と、詳しい話がどこにあるかだけです。92.0KBまで落ちました。決めごとの中身は、1つも変えていません。
これは会社の手順書でも同じだと思います。分厚いマニュアルほど、誰も突き合わせません。薄いほうが、正しいまま保てます。
この話、他人事ではないと思われたら
AIに任せる仕事が増えるほど、効いてくるのは書いてある決めごとのほうです。AI・DX伴走支援やClaude Code 導入支援では、動かすところだけでなく、決めごとを実体と合わせ続ける形にするところまでをご一緒します。

