
大阪で、写真事務所を一人でやっています
撮影があり、写真教室があり、会員制のコミュニティがあり、そこに原稿とサイトの更新が乗ります。事務のスタッフはいません。
その事務作業を、少しずつAIへ移してきました。この記事は、2026年9月の時点で実際に動いているもの全部の地図です。何をAIに任せて、何を自分の手に残したのか。数字ごと、そのまま公開します。
目的ははっきりしています。撮影以外に取られている時間を減らすことです。かっこいい仕組みを作りたかったわけではありません。
ここでは全体の形だけを書きます。個々の失敗談や、その週に何が壊れたかの実録は、それぞれの記事に分けてあります。気になったところから読み進めていただけるよう、本文からリンクしています。
全部、24時間つけっぱなしの1台の上で動いています
先に、どこで動いているのかを書きます。ここが抜けると、あとの話が宙に浮きます。
使っているのは、手のひらに載るくらいの小さなLinux機が1台だけです。ディスプレイもつないでいません。電源とネットにつないで、部屋の隅に置いてあります。24時間、電源を落としません。
なぜ普段使っているパソコンではだめなのか。閉じるからです。持ち出しますし、ふたを閉じればスリープに入りますし、更新が入れば勝手に再起動もします。決まった時刻に必ず動いてほしいものを、そこには置けません。「朝7時にメールを見る」は、朝7時にパソコンが起きていないと成立しません。
そして、ここがいちばん伝わりにくいところだと思うのですが。
AIを起動しているのは、僕ではありません。このサーバーです。
AIというと、人が画面に向かって質問を打ち込むものを想像される方が多いです。うちは違います。決まった時刻になると、サーバーが自分でAIを立ち上げ、指示書を読ませ、仕事をさせて、結果を僕のスマホへ投げてきます。そのあいだ僕は寝ています。朝起きると終わっています。
もうひとつ、地味ですが大事な設定があります。僕がログインしていなくても動くようにしてあることです。ここが外れると全部まとめて黙って止まるので、毎日の点検で確認しています。
この機械は非力です。重い処理は載せていません。それでも足りているのは、次に書く理由からです。
いま動いているのは、定期処理が64本と、常駐が2つです
数えました。決まった時刻に自動で走る処理が64本。それとは別に、24時間立ち上がったままの連絡係が2ついます。
- 15分おきに動くもの(9本) ── 届いたメールの確認、チャットの確認、サイトのお問い合わせの通知、そして「連絡係がちゃんと生きているか」の見張り
- 1日に何度か動くもの(8本) ── 予約可能日の公開、朝と夕方の記事配信、その日の予定の通知、承認待ちの返信案の再通知
- 1日1回動くもの(26本) ── バックアップ、翌日の撮影のリマインド、移動経路の下調べ、リンク切れの確認、その日やるToDoの入れ替え、外のサービスにつなぐ鍵の更新、月初なら請求書の作成
- 週に1回動くもの(18本) ── サイトの改善、記事の公開、過去記事の棚卸し、SNSへの投稿、SNSの数字の記録、お客さまがどこから入ってきたかの台帳づけ
- 月に1〜2回動くもの(3本) ── お渡しし終えた写真データの片づけ、月末の資料を収支の記録へ移す処理、いま読んでいただいているこの記事の見直し(後述します)
正直に書いておくと、この64本には仕事と関係のない、個人的な記録のレポートも混ざっています。ぴったり業務だけ、というほど整理されてはいません。
この半月には、領収書の保存や税理士への資料共有も仕組みに加えました。入金の確認には、税理士へ送るものと同じ資料を使うようにしています。
64本のうち、AIを呼ぶのは16本だけです
ここがこの記事の本題です。
64本のうち、AIを起動しているのは16本。残りの48本は、AIを1度も使いません。ただのプログラムです。
たとえば「新しいお問い合わせが届いていないか15分おきに見て、届いていたら知らせる」。これはAIの仕事ではありません。手順が1通りしかないからです。ここにAIを使うと、費用がかかるうえに、たまに余計なことをします。
逆に、AIに回しているのは判断・文章・読み取りのどれかが入っている仕事です。届いた連絡が急ぎかどうかを決める。予定と移動時間から無理のない並びを組む。サイトの数字を読んで次に直す場所を決める。録りためた音声メモから原稿を起こす。このどれかが要るものだけをAIへ回して、あとは全部ただのプログラムにしています。
この半月も、定期処理は増えました。月末の資料を収支の記録へ移す処理にも、AIは使っていません。広告が止まっていないか見にいく。入金と返金の動きを見にいく。決まった曜日にSNSへ投稿する。どれも手順が1通りなので、ただのプログラムで足ります。今回の集計では、AIを呼ぶ16本のほうは前回より少なくなっています。
ご相談を受けていると、「全部AIでやろう」としているケースがとても多いです。全部AIにすると、高くなって、遅くなって、結果もぶれます。効くのは逆で、AIを使わない側をどれだけ増やせるかのほうです。小さなサーバー1台で足りているのも、48本がAIを呼ばないからです。
事務と集客のAIは、2つに分けています
事務と集客を、ひとつのAIにまとめていません。役割ごとに2つに分けてあります。片方は事務の担当で、メール・撮影の案件・請求・スケジュールを見ています。もう片方は集客の担当で、サイトの数字・記事・配信を見ています。
分けている理由は2つあります。通知が混ざらないことと、片方が落ちてももう片方は動くことです。お互いのプログラムを読み込まない作りにしてあるので、事務側が止まっても集客側は平気で動き続けます。
この半月には、メールにつなぐ鍵やAIを起動する部分、使った量を確認する部分も、担当ごとに分けました。集客の担当が動くたびに、事務の担当から道具を借りてくる作りをやめています。
会社でいう部署分けと同じです。一人の担当者に全部を持たせない。持たせると、その人が休んだ日に全部止まります。
取引先へのメールも、一部は僕が見ずに飛んでいます
ここは正直に書きます。外に出る連絡を全部僕が確認しているかというと、していません。請求書のメールも納品の連絡も、僕が1文字も読まないまま取引先へ届いているものがあります。
そのかわり、承認なしで送ってよい用件を、名指しで5つだけ決めてあります。決まった取引先への、決まった中身のメールです。この一覧に無い宛先・無い用件は、どんなに定型に見えても送れません。
この半月には、僕の確認を待っている返信案を、もう一度知らせてくれる仕組みも足しました。確認待ちのまま埋もれないように、僕の手元へもう一度出してくれます。
最初から自動だったものは、1つもありません
大事なのはここだと思っています。その5つは、どれも同じ道を通って自動になりました。
まず承認制で回します。AIが下書きまで作って、僕が読んでから送る形です。それを何か月か、実際の仕事のまま続けて、間違いが出ないことを確かめます。そこで初めて、その1件だけを自動送信に上げます。毎月の請求書メールも、何か月か承認制で回してから切り替えました。「定型だから自動でいいはず」で始めたものは1つもありません。
そして、自動になったものにも戻り道を付けてあります。決めておいた手順のどれか1つでも満たせなかったときと、送信に失敗したときは、自動で承認制に戻って僕に確認が飛びます。迷ったまま送り切ることはしません。AIは「できませんでした」と言って止まることがありますが、止まったこと自体は問題ではありません。止まったと分かることのほうが大事です。
64本の全部に、「止まったら分かる」を付けてあります
自動化でいちばん怖いのは、失敗することではなく失敗に誰も気づかないことです。人がやっている仕事なら休めば周りが気づきますが、自動化した仕事は動いていても止まっていても同じ顔をしています。
ですので、こういう作りにしています。
- 失敗は、手元への通知や定期レポートで分かるようにする(毎回「成功しました」が届く仕組みは、すぐ読まれなくなります)
- 常駐している連絡係は、15分おきに別の仕組みから生存を確認する(止まった本人に「止まりました」と報告させることはできません)
- 毎朝1回、全体の点検を回す
- 受け取ったものは、判定がどうであれ必ず保存してから通知する(捨ててしまうと、間違えたことにすら気づけません)
見張りを足すきっかけになった出来事もあります。撮影の仕事のほうで出している広告が、審査に引っかかって数日のあいだ止まっていたことがありました。止まったことを、誰も教えてくれません。管理画面は、こちらが開きにいかないかぎり黙っています。ですので、広告のリンク先がちゃんと開けるか、審査の状態が変わっていないかを、機械が定期的に見にいくようにしました。入金と返金の動きも同じように見ています。
ここで一つ決めたことがあります。知らせるのは、状態が変わったときだけにしました。審査待ちのあいだじゅう「まだ待ちです」と鳴らし続けると、そのうち読まなくなります。読まれない通知は、無いのと同じです。上の1つ目と同じ考え方で、あとから足したものにも同じ線を引いています。Threadsは個別の通知を止め、週次レポートで動いているかを確認する形にしました。
この半月には、お問い合わせのバックアップに、保存したデータから戻せるかを確かめる処理も加えました。保存したデータを別に復元して確かめるところまで、定期処理にしています。
それと、サイトを書き換えたら1件ずつ記録を残しています。いつ・どのページを・どう変えたか。2026年7月26日から2026年9月16日までで255件たまりました。記録があるので、悪くなったときに戻せます。AIが毎週改善するホームページ制作でお渡ししているのも、この「記録が残る・戻せる」の部分です。
記事の公開まで自動です。ただし、数字は機械が突き合わせます
このコラムも、その64本の中から公開されています。文章づくりもAIへ任せています。
ただ、AIに書かせた文章をそのまま出すことはしていません。数字や固有名詞が入るので、こういう順番で通しています。
- 材料は、機械が実在の記録から集める(AIに探させない)
- AIには、その材料の原文だけを渡す
- できあがった原稿の数字を、機械が材料と1つずつ突き合わせる
- 合わなければ公開しない。下書きだけ残して、僕に通知が来ます
AIは、もっともらしい数字を自信たっぷりに書いてきます。お願いしただけでは止まりません。止めるなら、仕組みで止めるしかないので、こうしています。
出口も増えました。写真を並べたSNSへの投稿が、決まった曜日にひとりでに出るようになりました。ここは僕が手で上げていたところなので、その手数はまるごと消えています。つなぎ先の鍵には期限があるのですが、切れる前に機械が自分で取り直します。期限切れは、忘れたころにやってきて黙って止まります。ここも見張りと同じ話です。
この半月には、Threadsにも自動投稿の出口を増やしました。投稿の前には、長文を文字数に収めたり、トピックタグを確かめたりしています。
AIが走ってよい時間と、使ってよい量も決めています
AIには使える量に上限があります。ですので重い処理は深夜から早朝に寄せてあります。僕が午前中に使う分を、自分の自動処理に先に食べられないようにするためです。
そのうえで、1週間に使う量の上限も決めてあります。近づいたら、優先度の低い処理は今週分を見送ります。ただしメールとチャットの確認には、この制限を掛けていません。相手のいる仕事なので、費用を理由に止めたら本末転倒だからです。
ただ、AIを呼ばない処理でも、つないだ先のサービスで料金がかかることはあります。この半月には、AIの「無料です」という説明を信じて進めた処理で、料金が発生しました。費用は説明だけで決めず、実際に使ったときの金額で確かめる必要がありました。
会社に持ち込むときは、64本から始めません
ここまで64本と書いてきましたが、これは一度に作ったものではありません。1本ずつ増えていった結果で、最初から設計図があったわけではありません。
これまで増えたぶんも、そうやって1本ずつです。撮った写真をお客さまへお渡しする受け渡し。預かったデータを期限が来たら片づける掃除。広告の見張り。SNSへの投稿。お客さまがどこから入ってきたかを台帳へ書き足す記録。まとめて設計した日はありません。困ったこと、忘れそうなことが出てくるたびに、その1本だけを足しています。
お客さまがどこから来たかを知るために、公式LINEへ友だち追加したあと、知ったきっかけをタップで答えてもらうようにしました。SNSからサイトへ来た記録も、媒体ごとに台帳へ分けて残しています。
ご支援に入るときも、いきなり全体像は作りません。1本目に選ぶのは、だいたいこの3つが揃っている業務です。
自動化の1本目に選ぶ業務
- 毎日か毎週、必ず発生している(たまにしか起きない仕事は、作っても元が取れません)
- 判断が要らない(AIすら要らないなら、なお良いです)
- 半日止まっても、その日は誰も困らない(1本目から売上直結の業務を選ぶと、失敗したとき事故になります)
この3つが揃った業務が、どの会社にも必ずいくつかあります。まずそこを1本、止まったら分かる形で作りきる。2本目からは、1本目で分かったことを使って早くなります。
細かい話は、それぞれの記事に書いています
この記事は地図なので、ひとつひとつの失敗の詳細までは書きませんでした。中身が気になったところから、どうぞ。
- 「動いているつもり」がいちばん怖い ── 見張りを付けずにAIへ任せた話
- 「試したときは動いた」で本番に出す ── 人が見ているときだけ成功する自動化
- 自動化に「捨てる」を書いてはいけない ── 消えたお問い合わせの話
- 「0件だから問題なし」と判断してはいけない ── 計測は実際より少なく出ます
- AIの「データに基づく結論」を、そのまま信じてはいけない
- AIへの指示は「お願い」ではなく「仕組み」で守る
- 週ごとの実録 ── その1週間に何を任せて、何が壊れたか
「うちの場合、1本目はどれになりそうか」。それを一緒に決めるのが、初回相談の1時間でやっていることです。
この話、他人事ではないと思われたら
この記事に書いた64本は、一度に作ったものではありません。1本ずつ増やしてきた結果です。御社の1本目がどれになるかを決めるところから、AI・DX伴走支援ではご一緒します。まずは初回相談で現状をお聞かせください。